コロラドの時々日記

トランスフォーマーを中心にアメコミの事を載せたりするブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

PageTop

タイムシップを読む

ジーリー・クロニクルで有名なスティーブン・バクスターによる、
HGウェルズの書いた「タイムマシン」の二次創作作品。
遺族の許可を得てちゃんと出版社から発行されてるけど、まあ二次創作ではある。
でも史上最高の二次創作と個人的には呼びたい。

あらすじはこのような感じ
西暦で数えると80万年頃の世界で出会った人類の変種であるウィーナと言う少女は
同じく人類の変種であるモーロックによって連れ去られてしまった(ここまでがタイムマシンの内容)。
そして現代へと帰った後、未来での体験談を友人達に話した事で時間旅行者は
再び1890年から80万年へと行き、ウィーナを助け出す事を決意する。
しかし時間旅行者が次に到着した未来はかつてとはまったく違うものになっていた……


タイムシップのキーポイントは、原作であるタイムマシンで見事にスルーされていたタイムパラドックスを
物語の中心に描いたところにある(と後書きに書かれている)。
しかし個人的に序盤のハイライトに推したいのはこのタイムパラドックスに気付く事になる経緯。
基本的にこういう歴史が書き変えられてしまう(と登場人物が考える)時間旅行物だと、
「正しい歴史を守るために~」と言う展開になる事が多いのに、
この時間旅行者は「歴史を変えてしまう事で生まれる前の命を殺してしまう」と考え、
タイムマシンを史上最悪の殺戮機械であり、だからこそ昔の自分に開発させてはいけないと行動に移す。
(上に書いたよくある展開と結論は一緒な辺りがもう1つの面白みであると思う)

そして64万年を再び過去の自分であるモーゼス(と便宜上呼ばれている)にタイムマシンを作らないように宣言するが
その事でまた新しい可能性が作られて、再び新しい歴史が出来てしまった事、
新しい1938年で思索の場と、ネボジプフェルと言う新しい未来での人類からの助言を得た事で
時間旅行者は時間が書きかえられない、
つまりこれまたよくある「過去で何かをしても新しく分岐するだけ」と言う平行宇宙観へと移動する事になる。
さらに時間旅行者の残したメモを調べて作られた1938年製タイムマシンによって歴史は分岐に分岐を重ねる事になる。

その分岐のおしまいとして、1938年で時間旅行者が出会ったクルト・ゲーデルの提唱した「最終世界」が実現する。
最終世界は時間的にも空間的にも無限大の広さを持っていて、全ての物事が解釈された文明の最終形態を具現化したような場所。
無限の過去から存在しているからどの歴史よりも古いし、無限の未来まで存在しているからどの歴史よりも長続きをする。
しかしそんな世界の完全さに時間旅行者は耐えられず、人間としてもう一度行動を起こしたいを願う。

この物語の特徴とも言えるのは何度も繰り返し登場する人間の定義の広さ、そして素晴らしさと不完全さ。
80万年後にいた退行した人間であるエロイとモーロックも人間であると言われ、
64万年後にいた卓越した知性と技術を持つモーロック(風の種族)も人間であると言われ、
新しい20世紀にいたナノマシンの集合体である金属ピラミッド、普遍建設者も人間であると言われる。
そこにあるのは人間と言う言葉の定義の拡大であり、ホモ・サピエンスの狭義化じゃないだろうか。

また、作中において64世紀モーロックであるネボジプフェルは、
作中用語としての人間の第一義と第二義をわざと混同するかのような話し方を時折行う。
時間旅行者が主人公である理由は
19世紀の科学用語や理解において多世界解釈や技術レベルを説明させるためとされているが、
このような(狭義の)人間的モラル感を読者と共有し、
それとは相容れない状況や物事の考え方における居心地の悪さを感じさせる事も目的なのではないかと思う。
そしてその居心地の悪さ、視点の変更こそが個人的にはSFの醍醐味、センスオブワンダーだと思っている。

次に人間の素晴らしさについて何度も何度も強調されている部分においては
非常に(個人的に考える)イギリス人の書き方そのもの。
必要以上に素晴らしさを描き出すわけでもなく、悪さを必要以上に描いてこき下ろすわけでもなく、
なおかつ読み手を誘導しやすい感情論にも陥らずに、でも皮肉は入れて描くのはやはりイギリス人であると思う。
それが最もよく現れているのは最終世界以降の展開。
文明の理想系とも言える状態に居心地が悪くなり、不完全な現実を望む様子。
自ら考え、行動する事によって周りを動かし、ひいては世の中を動かせる場面。
学ぶ事によって偏見を越え、自分の中にあった恐怖も押し殺せるようになるところ。
なんかこう具体的に抜き出すと物凄く平凡な描写に見えるけれども
この全てを時間旅行者と言う同じ人物が行っているのは、やはりバランス感覚に優れた描き方であると思う。

ついでにこの皮肉さを交えたイギリス人な描写は他にも見受ける事が出来る。
世界解釈において、作中で多世界解釈になった時点で「物事をタイムマシンで変えても何の意味もない」と考えられるけども
未来永劫無限に続く最終世界が見つかった時点で
それ以外の全ての可能性は数万年とか数百億年と言う短期間で消え去れる泡沫の夢でしかなくなる。
つまりこれは歴史改変物の基本である「正しい歴史」が理路整然として頑健に存在すると言う描写なのだろうけど
最後の最後で時間旅行者はタイムマシンを無意味なものとして見なし、
鋤や鍬に作り変えた上で歴史の筋道に新しい可能性を作り出す。


最後に1つ気になる点について。
1870年から1938年へと一度時間旅行者は連れて行かれるわけだけど、
過去へ行くごとに歴史が新しく分岐するのなら、
イギリス陸軍が到着した1938年は出発した1938年とは別物になっているのではないだろうか。


総評として
とりあえず一言で言えば素晴らしい作品。
バクスターらしい大スケールの物語と描写がありながらも
ジーリーシリーズほど人を突き放した感じになっていない時点で素晴らしい。
(ちなみにタイムシップで使ったギミックは別視点でジーリーでも使われている)
19世紀の技術レベルで20世紀の技術を説明する試みがされているので複雑な用語などが出てきても
親切かつ丁寧に説明がされていてわかりやすいのもSFとしては人に勧めやすく長所と言える。
そして原作となるタイムマシンでの本当のテーマである社会批判を引き継ぎ、
バクスター流に料理しているところは原作に対する敬意が表されていると思う。
様々な点から個人的オールタイムベストの作品。

スポンサーサイト

PageTop

バットマン:ブレイブ&ボールド2巻

今回はアニメも好調っぽいブレイブ&ボールドのコミック版単行本のレビューを
アニメの方はいい加減に侵略の日パート2を放送して欲しいんですが。

この本ではコミックの#7~12、
・破滅の日計画の秘密(ドゥームパトロール登場)
・バットマン対雪男!(十豪侠登場)
・キャットマンの物語(キャットマン登場)
・巨大バットモンスターの攻撃(アトム登場)
・牙の再来!(グリーンアロー登場)
・最後のクリスマス(アダム・ストレンジ登場)
の全6話を収録

毎度毎度バッツは色んな目に合うわけですが
この中でも面白いのは「キャットマンの物語」と「バットモンスターの攻撃」
キャットマンのキャラクター自体はシークレットシックスに登場しているのとは全然別の、
名前以外はオリジナルなキャラクター。

いつものように犯罪者と戦うバットマンの前に現れ、共闘しはじめた謎の男。
これまで以上に活動ははかどるものの、その裏では…というある種定番の出だし。
もちろん裏でやっていた事がばれ、決別と言う流れになるのですが、
キャットマンの行動の理念と、その理念に従った最後の展開が素晴らしい
「The next time i meet him. Will it be as a friend....or foe?」
というバッツの締めくくりの台詞も今回のキャットマンを表してると言えるかも

バットモンスターの話は打って変わってダイナミックな構図による戦いが魅力
ヒューゴーストレンジに捕まった時に打たれた薬品の影響でバットマンが怪獣になってしまった!
これに対抗するには巨大化して同じぐらいの大きさになれるアトムしかいない!
という物凄くわかりやすい話。

アトム巨大化出来たっけ…って言う疑問は置いておいて、ここは見事なアートを楽しみが良し。
ビッグベリーバーガーも当たり前のように登場して看板をむしられる辺り小ネタもしっかりしてたり。

アニメのキャラデザインを上手く再現したアートと、
アニメに負けず劣らず波乱万丈なのからしんみりしたものまで面白い話、
そして次々と出てくる色んなキャラクターを楽しめるので、なんとなく手を出すにはぴったりの本かも。
あくまでアニメの延長線上だけど、それだけじゃないよ、と書いて締める。

PageTop
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。